剱は別格

剱は別格

別山より剱

剱へ

「剱は別格だ。他の北アルプスの山とはちがう」、とか「剱は噛むほどに味が出る」など剱に行った人は剱を親しみをこめて言う。難所があるとはいえ、調べると私でも登れそうだ。今年の梅雨明け登山は剱にいくことにした。
雨の室堂

まずは室堂より剱山荘へ

大町の扇沢に車をデポ。始発のトロリーバスで出発し室堂についたのはほぼ9時。室堂は小雨。霧に霞むお花畑の遊歩道を剱山荘へ向かう。雷鳥坂を息を切らせながら登り、別山尾根の剱御前小屋に到着したのがちょうど12時。ここは親切な小屋で、休憩場を無料開放している。助かる。お礼を言って休憩場でランチを取る。ランチのあと、剱沢経由で剱山荘へと下る。
霞の雪渓

途中の雪渓で小屋の従業員らしき若者たちが一生懸命に雪渓に石を並べている。聞くと、濃霧の雪渓で方向を見失ってしまう人が多いので石を並べているのだとのこと。濃霧だと、とんでもない方向に行ってしまうそうだ。よく覚えておこう。
左手前に剣山荘。中央が一服剱。奥の前剱は霧の中。

剱山荘

山荘の従業員もみな感じがいい。おかげで緊張がほぐれる。山荘前はお花畑となっており、遠く後ろ立山とのコントラストが絵になる。そんな景色を前にしてまずはビールで一杯。夕刻、泊り客は明日の準備に余念がない。私も雨具など最低限の荷とする。朝食も弁当を頼んだ。早出をする人が多いので八時には消灯。
剱山荘より剱御前山

いよいよ剱へ

剱山荘を出発

4時半、明るくなってから出発。剱へ連なる別山尾根に入る。山荘がくれたルートマップは役に立つ。とくに事故の多い箇所が説明されている。案外と難所では事故はなく、前剱の下りが要注意とのこと。実際に前剱の急坂はザレている。登るのはいいが、下るのは大変だ。
前剱の斜面
そんなことを考えながら前剱を登りつめると前方の霧の中から剱が姿を現した。おおすごい。その勇壮な姿に圧倒される。あの岩山を登るのか。

剱へ

難所との出会い

剱までの鎖場には番号がふられている。これまでの鎖場は大したことは無いが、これからがいよいよ本番。
5番目鎖場

まず「平蔵の頭」。鎖に手をかけると「ちがいますよ」と後から声をかけられた。聞くとこの鎖場は登りと下りが分かれていて、手前の鎖は下り専用とのこと。少し奥の鎖が登りだそうだ。あらためて鎖を手に登り切ると、なんと今度はそのまま急な岩面を下る。なるほど、よくネット画像で見ていた「平蔵の頭」とはこの岩面のことだ。
平蔵の頭

鎖を手に岩面を下り、そのまま崖沿いに歩くと「平蔵のコル」。ここをすぎるといよいよ「カニノタテバイ」。さあ、登り最大の難所だ。経験者に聞いたり、ネットで動画をみたりして何度もシュミレーションしたところだ。鎖を握り、「よし!」と声をだし、いっきに登り詰めた。足場も確保できるし、技術的には難しくない。しかし、下に切れ込んでいく沢を見下ろすのが怖かった。
カニノタテバイ

山頂へ

「カニノタテバイ」を登るとあとは山頂まで単調な登りとなる。霧もはれたし、難所も通過したし、さあもうすぐ剱岳だ。8時、ピークを踏む。山頂の祠前では登山者たちが順番に記念撮影をしている。遠く見通すと能登半島から富士山まで見える。あらたためて剱の壮大さを実感。岩に腰かけ、山荘から持ってきた弁当を出す。

山頂より八峰方面

下山

下山開始。登ってきた尾根が良く見える。

下山の最大の難所は「カニノヨコバイ」。ここも経験者にインタビューしてきいたところ。「怖いけど大丈夫」というのが結論。もっとも大切なのは鎖を握る力だと思い、ジムでトレーニングもしてきた。この力に余裕があれば楽に最初の一歩を探すことができる。しっかりと鎖を握り、全身を鎖にゆだね右足を下ろす。「あった、あった」、問題の最初のひっかかりはすぐに見つかった。そのままヨコバイして難所をクリア。想像したより短い。梯子を下り、少し歩くと登りルートに合流する。

いよいよ「カニノヨコバイ」

「カニノヨコバイ」をクリア

山荘へ

「平蔵の頭」を登り返し、前剱へ。さあ、ここからは気を引き締めて。前剱からの下りはたしかに浮石も多く、ザレているので大変だ。確かにここが最大の危険箇所かも知れない。これまでの疲労もあるので、慎重に下る。確かに何回かズルズルとすべってしまった。
前剱より剱山荘を見下ろす。遠くは笠ヶ岳だそうだ。

そして一服剱を過ぎると山荘はすぐ下に。雪渓を渡り山荘に到着したのはちょうど12時であった。山荘でコーヒーを飲みながら今日の行程をしみじみと思い出しランチをとる。
今日はこれから剱御前小屋まで移動し、そして翌日は立山三山を縦走した。
翌日、別山より富士が遠望できた

感想

剱は一言でいえば「懐の深い山」か。室堂からのアプローチに変化があって楽しい。勇壮な剱がだんだんに近くなってくるプロセスがいい。そしてその勇姿は確かに別格だ。あの峻険な尾根を見るといったいどうやって登るのかと思うが、それを登れるのだから面白い。ただ問題は岩山なのでよほど天気が保証されていないと危なくて登れないことだ。登頂した前日は雨だったので一人も登らなかったとのこと。計画には雨の場合の予備日が必要だろう。私も雨のため1週間予定を延ばした。
平蔵の頭の様子。あとからあとから人が続く。人気の山だ。


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