霧中の八ヶ岳を歩く


連休は八ヶ岳定番コースに決めた

海の日を7月第三月曜なんて誰が決めたのか。貴重な連休がいつも梅雨末期と重なる。案の定今年も7月16日から始まる連休は曇りか雨マークばかり。直前まで天気予報とにらめっこ。特に17日はどの山も午後から雨予報。しょうがない2泊山行は7月末までおあずけだ。でもせっかくの連休だ。1泊で八ヶ岳に行くことにしよう。どうせ行くなら登ったことのない阿弥陀岳にも登ってみたい。てな訳で、美濃戸→行者小屋→阿弥陀岳→赤岳(泊まり)→横岳→硫黄岳→赤岳鉱泉→美濃戸のコースを設定した。
まずは登山口まで


出発

15日、仕事を終え、美濃戸登山口駐車場まで小雨のなか車を走らす。夜明け、目を覚ますとまだ小雨は降っている。予報だと止んでいるはずだが。しょうがない、いきなり雨支度だ。

美濃戸から八ヶ岳に向ってコースは北沢と南沢との2ルートがある。行者小屋経由で赤岳、阿弥陀岳を目指すのが北沢コース。赤岳鉱泉から硫黄岳を目指すのが南沢コース。私は北沢コースで登り、南沢コースで下ることになる。まずは行者小屋まで沢沿いのゆるやかな登りだ。
北沢コースは緩やかな登りからスタート

このコース、これで3回目だ。前回は3年前の同時期。このコースで学生時代の友人と30年ぶりに旧交を温めた。学生時代の友人とはいいものだ。30年の年月はむしろ話題に尽きることがなかった。ただ残念なのは前回は阿弥陀岳をオミットしたことだ。赤岳への中腹でランチを食しながら眺めた阿弥陀岳が忘れられない。

行者小屋まで

そんなことを思いながら歩を進めてるとやがて木々の間から日が差し込んできた。雨が止んだのだ。こうなったら蒸れるレインウエアーはいらない。即刻、ザックの中にしまい込んだ。道はコメツガの香りに包まれ一本調子で緩やかに登る。
雨が止み薄日が

ほぼ標準コースタイムで行者小屋に到着。すでに先行者たちが思い思いの場所に色とりどりのテントを張っている。水も豊富だし、広いし、いいテン場だ。残念だが今日は八ヶ岳の尾根は雲に包まれて見えない。ほんの少しだけ、横岳の急峻な尾根が見えている。赤岳も阿弥陀岳もここからほぼ500メートルの標高差だ。かなりの急登となる。
行者小屋より、ほんの少し横岳の尾根が雲間から

悲劇の阿弥陀岳岳へ

さあ、阿弥陀岳に向って出発。ななかまどが茂る斜面を九十九折に登っていく。紅葉のときはすごいだろうなあ、などと思いながら1時間ほど登ると森林限界をこえ、阿弥陀岳と中岳の間にあるコルに到着。数人の登山者が休んでいる。

阿弥陀岳を見上げるが、その急斜面に圧倒される。いきなりハシゴ段がかけられている。多くの登山者がデポしたザックがあちこちに置かれている。コースタイムで山頂まで25分。みな空身で登っているようだ。私もザックを下ろし、水だけ携帯して登る。ハシゴ段からはじまり、あとは鎖場の連続。3点確保で慎重に登る。背の下にザックをデポしたコルが小さくなっていく。見上げれど山頂は目の前の岩陰に隠れて見えない。
阿弥陀への登り、スタートのコルは霞のなかに

岩の間に咲いている花々に励まされ、ようやく山頂に到着したのが11時。山頂は狭い。雲に包まれ下界も見えない。今年の冬にここで学習院大学の山岳部学生が2名命をおとした。よくも雪中にここまで登って来たものだ。情報によるとホワイトアウトのため下山方向を見失ったみたいだ。冥福を祈る。
阿弥陀岳山頂

コマクサに慰められながら

休憩もそこそこに下山開始。空身なので足も軽い。コルがいいペースで近くなってくる。コルに到着したのがちょうどランチ時なので、ここでインスタントラーメンでランチ。
コルへ戻る

腹ごしらえを終え、中岳を越え赤岳を目指す。中岳山頂から先は赤岳の取り付きまで大下りだ。その先、登山道は雲の中に消えていく。その雲の間から時折赤岳の峻険な岩場が姿を見せる。

中岳山頂直下に裂くキンバイ

中岳から下り、赤岳に向って登山道は消えていく

あの岩場もこれで3回目。気負いはない。草原の斜面を登り、やがてガレ場の道となる。下山者が「まあきれいな花」と言うので、見ると、なんとコマクサが咲いているではないか。感動のシャッターを押す。
腹ばいになってコマクサを

さあいよいよ最後の岩場登りだ。ルートは明瞭で、鎖場の連続。下山者と道をゆずりあいながら高度を上げ、ようやく赤岳の山頂に最後のステップ。

下山者と譲り合いながら高度をあげる


山頂直下にて

時計を見ると14時。多くの人がポールの前で記念撮影。私も登頂したグループのシャッターを押してあげた。ここも残念なことに下界はまったく見えない。雲の中に歓声が響く。
山頂

山荘へ下る

さあ、あとは直下の山荘「天望荘」まで下るだけ。とはいっても長い急斜面のザレ場だ。霧の中、鎖を頼りに慎重に下山。鎖がなければこのザレ場はとても下れない。やがてうっすらと霧のなかに山荘が見えてきた。到着は15時。受付に聞くとほぼ満員とのこと。食事はバイキング方式。しかし、おせじにも美味しいとは言えなかった。
ワインはまあまあだけど、食事が、、、、

霧の中を核心部へ

17日朝、朝食は携帯食ですまし、5時半に出発。午後からは雨との予報のため早立ちだ。山小屋は霧に包まれ視界は100メートルほどか。これから硫黄岳まで、岩場の連続だ。前回は友人と話をしながら歩いたので記憶が定かではない。
視界不明瞭

途中、長い鎖場、ハシゴ段、岩場登りが連続する。霧中の岩に咲くリンドウ、キンバイなどが彩りをそえる。こんな過酷なところに一生懸命に咲いている花に感動。
霧に濡れるリンドウ

しかし、岩場の登山道はルート識別が不明瞭なところがあり間違えやすい。慎重に判断するも、ついつい間違えてしまう。間違うとその先は崖っぷちに行き当たるので気づくのだが、戻るときは景色や太陽がのぞめないので、つい方向感覚を失ってしまう。あやうく赤岳方面に来た道を戻ってしまったこともある。こうして遭難するのかと変に納得。
八ヶ岳の鉄ハシゴは北アルプスに比べてちょっと頼りない


濃霧のなか手探りで


硫黄岳へ

ここをすぎればあとは岩場はなくなる。下りてくる若者グループをまち、横岳へのハシゴ段を登る。濃霧の山頂はただポールが立っているだけ。山頂での休憩もそこそこに硫黄岳までガレ場の登山道を進む。すれ違う登山者はポールを持っているので、もう岩場歩きはないことを確信。
休まずに通過

やがて霧の中にうっすらと硫黄岳も見えてきた。足元には沢山のコマクサが賑やかに咲いている。硫黄岳山荘の前を通過して、山頂へ最後の登り。丸坊主の硫黄岳へゆるやかな登りをゆっくりと登り、山頂に到着したのが8時であった。多くの人が順番でポールの前で記念撮影をしている。
ポールの前で霧中の記念撮影

下山開始

道標で方向を確認して、さあ、赤岳鉱泉へ下山開始。山頂直下で、一瞬、歩いてきた尾根が雲間にみえた。いそぎカメラを出してシャッターを押す。
右奥から、権現岳、赤岳、地蔵の頭、横岳への岩稜尾根が左に消えていく

やがて下山道は森林限界を抜け林のなかの九十九折へと変わる。硫黄岳を目指す登山者が次々と登ってくる。たしかにこのルートは登りやすい。赤岳への登りとは大違いだ。などと思いながら、赤岳鉱泉に到着。ここは別世界。これまでの緊張からいっきに解放された気分だ。多くの登山者たちが楽しそうに会話しながら休んでいる。私は一切れ100円のスイカを食す。15分ほど休憩して、沢沿いの道を下り、美濃戸登山口に着いたのが11時30分。小雨が降り始めてきた。
一切れ100円

今回学習したこと

今回は濃霧の中の歩きがいかに危険か体験できたことだ。太陽や遠くの見透しがないと方向感覚をなくしてしまうのだ。これは夜間の歩きにも通じる。特に岩場歩きは道の識別が不明瞭なので、慎重に進まなくてはいけない。今回は明らかに崖っぷちに立ってしまったのでミスに気づいたが、識別不明瞭のまま、どんどんと深みにはまっていってしまったかも知れない。そうなると、方向感覚を失い、戻ることもできなくなるのだ。もっとも有効な対策は複数人で歩き、個人ミスを防ぐことなのかも知れない。たしかに道迷いは単独行者に多い。

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