雨の東北山行

2018年8月、盆休みに東北の月山、栗駒山を登る。

13日朝、月山八合目駐車場で朝を迎える。例年盆休みは1泊の山行を目指すのだが今年は悪天のため断念。そこで多少の悪天でも登れる月山に行くことに決し、前夜から霧雨の駐車場で車中泊。予報だとこのあと雨は止むとのこと。

このコースはこれで二回目だ。前回は2010年年7月、鳥海山と月山を登った。あの頃は山登りを始めた頃で東北の山々を歩いていたときだった。和賀岳の頂に立ち、遠くに見える山々を見て、あの頂きにいつか登ろうと決めたことがきっかけだった。月山もその山の一つ。鳥海、月山と連日で登ったが梅雨明の天気に恵まれ、花と展望を満喫できた。遠望した日本海がいまでも瞼に浮かんでくる。山を歩いていると忘れられない風景がいくつかあるが、鳥海から見下ろした日本海、残雪の月山はそのうちのひとつだ。今年は霧に包まれた静かな登山となるだろう。前回のように登山を始めたころの新鮮な躍動感もない。
前夜の駐車場の様子
登山開始。まず湿原帯を歩く。

このコースはまず湿原帯歩きから始まる。前回の記憶を蘇らせながら歩を進める。やがて登山道は湿原周りのコースからはずれ山頂を目指す。このコースの出発点はすでに8合目なので、山頂までの距離は短い。ほんの3時間も歩けば山頂まで登れる。昔はこんな楽な歩きではなかったはずだ。力ずくで山を切り開き8合目まで道路を作ってしまうとは、月山の霊験も薄れてしまう。

やがて湿原を抜けると霧雨もやみ、雲海を背にして登る。登山道は湿原帯から笹藪帯となり徐々に高度をあげ、やがて一面のお花畑へと抜ける。
振り返ると雲の間に鳥海方面の山々が

周りには白い残雪帯も見える。日本海側の山は雪深いので夏の訪れは遅い。ここはまだ初夏の山だ。同じお盆の頃でも八ヶ岳などはすでにリンドウなど秋の花が咲き始めているところだ。ところが月山ではチングルマ、ハクサンフロウ、キンバイなど7月に見かける花が咲き乱れている。
笹藪帯を抜けると一面のお花畑が広がる

ゆるい傾斜の登山道を花を見ながら登るとやがて9合目の仏生池小屋に達する。小屋の周りには何やら石柱が祀られ白装束の登山者が参拝している。小屋も修験者たちへのお守りみたいなものを販売している。ここは山全体が月山神社の参道なのだ。
9合目、仏生池とある。参拝も仏式。完全に神仏混合だ。

さあここからは山頂までさらに緩い登山道となる。途中一箇所だけ難所らしきところがあるがたいしたことはない。やがて登山道は平らなお花畑の木道となり、そして「剣が峰」の岩場歩きをへと続く。その先は山頂の神社に達する。前回7月に登ったときはこの「剣が峰」は残雪帯歩きであった。今年はその残雪帯は「剣が峰」の直下まで融けて後退していた。
剣が峰を歩く登山者

剣が峰から山頂小屋が見えてきた

山頂には神社があり参拝料は500円也。立山の雄山も山頂には参拝料を納めなくてはいけない。私は無宗教なので参拝料は納めずに、少しの休憩の後に下山する。下山開始直後に登山道から少しはずれたところに三角点を発見。これを登頂の記念とした。
この先500円也

下山途中にすれ違う登山者はファミリーあり、老夫婦あり、登山者あり、まるでミニ高尾山である。東北はこのように自然が豊かな山がファミリーで楽しめることを羨ましく思う。
山頂近くに咲いていたチングルマ
木道脇まで花が咲く

今回は月山は予定外の山であった。本来は岩手県の山を検討していたが悪天のため山形の山に変更した。鳥海山も検討したが残雪が多いために断念。来年はしっかりと支度をして鳥海山を登ることにしよう。

翌14日、朝の墓参りを済ませ、栗駒山へ。10時半岩手県側の須川温泉をスタート。今日も小雨模様だ。湯気の立つ湯川を見ながら登り始める。

湯川の脇を登山道を登る

湿原を抜けると登山道は低木帯の登りとなる。濡れた木々をかき分けながら登ると全身がずぶ濡れ状態となる。低木に囲まれているので展望もない。しかし足元の登山道は明瞭なので一歩一歩と高度を上げていく。やがて低木帯がハイ松混じりとなり木々の上から山頂が見えてきた。昨日の月山と異なり花に慰められることはない。ここまで3人グループの登山者とすれ違っただけ。熊を警戒するためわざと大きな音をだし、ときどきオーイなどと声を発しながら登る。
登山道は最初に名残ヶ原を通り抜ける。正面の栗駒山山頂は雲に隠れている。

登山道は雨が川となって流れている

ほどなく勾配もゆるくなり山頂は近いと確信するも木々の密集度はさらに濃くなる。まるで最後の天然シャワーだ。懸命に木をかきわけて必死に登ると木々の向こうから人々の歓談の声が聞こえてきた。やがてかきわけた木々の先に空間が開け山頂に達した。時刻は12時15分。コースタイムより早く達してしまった。こんな登山道は休む気にもなれないのでついつい足早となってしまう。
ようやく木々の間から栗駒山山頂が見えてきた

山頂に達すると雨も止み、雲も明るくなり若干の展望も楽しめるようになった。今日のランチはアンパン。できるだけ身を軽くするため最低限の食料としたが着替えを持ってこなかったことを反省。雨の登山は着替えが必携であることを痛感。今日は幸いに雨も上がったが、もし雨が降り続けて気温も下がったらきっと寒さにこごえたに違いない。
山頂の様子
山頂より宮城県側のコースを見下ろす。溶岩のガレ場から栗駒山は火山であることが明瞭。
2015年5月、ほぼ同じ位置からの画像

下山は須川へのメジャールートである昭和湖経由を選ぶ。メジャーなだけあって登山道も広く、濡れた木々のシャワーもない。5月連休に歩いた雪上のこのコースを思い出しながら昭和湖に下りる。神秘的な灰色の湖面。しかし20年以上前はルリ色に輝いていた。自然の成り行きだからしょうがないのだろう。
尾根を下る。正面は秣岳。登山口にはこの先の鞍部を右に下りていく。
雲に覆われる昭和湖

ここから霞のなかに薄っすらと地獄谷を見ながら歩く。ガスのため木々は枯れ硫黄色の岩が露出しているのが見える。昭和湖から流れ出る水流はまるで賽の河原のようだ。ここからは昭和湖で一緒になった女性二人連れと会話しながら歩く。彼女たちは気仙沼からきたそうだ。震災時の壮絶な体験談も聞かせてもらった。「今日は足湯も楽しんだし、きれいな昭和湖も見れたし、よかった」との言葉にこころから同感する。震災もこうして体験から思い出となっていくのだろう。
登山口では多くの観光客が足湯を楽しんでいる

須川温泉に到着したとき、また小雨が降り出してきた。今夜は娘を新幹線駅に迎えに行くことになっている。温泉はあきらめて雨のなかハンドルを握り九十九折のドライブウェイを下っていった。こうして今年の東北山行は終わった。
翌日は石巻で開催されている「リボンアートフェスティバル」へ
石巻の震災の死者は3978人。作者は3978体までひたすら木彫りをつづけている。




0 件のコメント:

コメントを投稿