雲取山再訪




.春めいてきたこの頃、そろそろ長丁場歩きをしてみたくなり、雲取山にいってきた。当初は自炊小屋泊まりのつもりで40リットルのザックに食糧、アイゼンを詰め込み出発したが、雪もなく順調に歩けたため、そのまま泊まらずに下山してしまった。ついつい無理をして歩いてしまう悪い癖だ。中途半端でフラストレーションの残る山行であった。

朝7時半、鴨沢の駐車場に車をデポして出発。雪に覆われるこの季節は鴨沢コースが雲取の定番コースである。この時間に出発するのは殆ど日帰り組。身支度も軽そうだ。小屋泊予定の私は満杯のザックを重そうにヨロヨロと登っていく。次から次へと後続に抜かされるも、あせることない。1年前の風景を思い出しながらマイペースで歩く。間違いなく今年は雪が少ない。すでにこの時点で10本アイゼンを担いできたことを後悔。
朝日の差し込む登山道、勾配はなだらか

今日は4月の気候だと車のラジオは言っていた。ザックの中は脱いだアウターを詰め込んだためますます満杯状態。結果論だがこのザックから不必要なものを取り出したらかなり軽くなるだろう。脱いだアウター、予備のアウター(ダウンの他にもう一枚持ってきた)、10本アイゼン。初心者ほど余分なものを持ってくるというが、果たしてこれらは無駄な持ち物なのか、自問しながら登る。無駄かどうかは結果論であり、最悪の事態を想定すべし、、、いやいやそんな無駄なものを持ってくるから余計に体力を消耗し自滅するのだ、、、どちらが正解なのか。
ブナ坂へのトラバース道、先行する彼とは下りも共にする

そんな問答を繰り返しながら、いつの間にか七ツ石小屋との分岐点まできた。昨年はここで10本アイゼンを装着したが、今年はまったくの無積雪。登山道は斜面をトラバースして尾根道に至る。遠くに見える尾根にも雪は見えない。きっと尾根道にも雪はないのか。複雑な思い。
ブナ坂


トラバース道と尾根道の合流点「ブナ坂」に到着。カラマツ林の下に道標が立っている。これまでの細いトラバース道から開けた広い登山道となる。有名な防火帯の登山道だ。ゆるいアップダウンの尾根の先に小雲取山が見える。あの手前に宿泊予定の奥多摩小屋があるはずだ。まだ11時前だ。とりあえず小屋まで歩を進めることとする。
ブナ坂スタート

奥多摩小屋

やがて奥多摩小屋に到着。風の強い尾根を避けるようにして建っている。引き戸を開け、今日の宿泊可否を確認。そのまま休憩もとらずに雲取を目指す。歩きながらランチ代りにSOYJOYを口にする。やがてこのコースの最難所である小雲取への登りとなる。相変わらず雪はない。このままだとアイゼンは使うことはないだろう。小雲取を登りきると登山道の先に目指す雲取山の山頂避難小屋が見える。もう少しだ。マイペースを維持しながら山頂に到着したのは13時。ほぼコースタイム。山頂は人も閑散として静かだ。すれ違う登山者も淡々として下っていく。私も記念の一枚を撮ってもらい長居はせずそのまま下山開始。
小雲取をすぎると山頂小屋が見える
昨年の様子

山頂手前から。山頂に見える彼はここまで3時間できたとか。加藤文太郎なみの速さ。

まるでキリストの張り付け

このままだと早く小屋に着いてしまうなあ。どう時間をすごすか。などと思ううち、やがて「頑張って下ってしまおうか」と考えるようになってきた。いつもの悪い癖。この時間だと多分17時頃には下山できる。計算ではそうかもしれないが「7分のスタミナで歩く」のが山歩きの鉄則だ。重いザックを担いでいたので、とても余裕のある歩きではない。多分前後の登山者が殆ど日帰り歩きだったことが影響したのだろう。下り始めた脚はどんどんと先に進もうとする。小屋前にきたときは14時前。すでに私の気持ちは下山と決まっている。小屋番に侘びを告げそのままブナ坂を戻り、鴨沢を目指す。ここでこの時間にすれ違う登山者は皆泊まり支度だ。私もスタートを遅くしていたらきっと彼らと同じように素直に泊まっていたことだろう。途中からは同年輩の登山者と下りを共にし、これまでの登山経験や情報を交換しながら歩いたため、いつの間にか鴨沢に到着。時計を見たら17時前だった。食べなかった食糧、付けなかった10本アイゼン、着なかった防寒着、余分なボトルの詰まったザックを下ろし、達成感なき山行を終えた。なぜか疲れはない。
尾根道を戻る、風向きに木がなびいている

0 件のコメント:

コメントを投稿